January 23, 2006

『27人の二人』(Hybrid版CD-ROM)

 「自分だったらどんな写真を撮るだろう。こうは撮らないよな」なんてつい考えてしまう。この作品は“写真集を眺めたい”人よりは、自分でも写真を撮りたい何かを作りたいと思う人におすすめです。


著 者:のぎすみこ
価 格:3,990円(税込)

■『27人の二人』を立ち上げる。冷房のきいた画廊に一歩足を踏み入れた気持ち。さて、誰の作品から見ようかな……。
 そんな“空間”を感じられるCD-ROM。写真集、とはちょっと違う。視点が一つ(一人の撮影者あるいは一人の編集者)ではないからだ。なにせ視点は27人分ある(企画者のぎすみこを含めると28)。対して素材は2人の女性に限られている。

「二人のモデルを素材に、好きなように写真を撮ってください」――

アートスクールの課題にありそうだな。“ありそう”なアイデアだけれども、その素材に、撮影者の側が揺れている様が見え隠れ。むしろモデルの側が撮る側を翻弄しているような。「自分だったらどんな写真を撮るだろう。こうは撮らないよな」なんてつい考えてしまうのだ。その点で、この作品は“写真集を眺めたい”人よりは、自分でも写真を撮りたい何かを作りたいと思う人におすすめ。

 では、その“揺さぶられる側(撮影者)”を列挙してみよう。


橋本浩美、下関マグロ、吉川基子、佐藤美保子、河野智美、小野澄恵、会田誠、リーラ、潮来真由美、三田村光土里、ピーター、小山朝子、宮嶋貴子、高遠円、土屋さゆり、前田茂、藤原章、今多千絵、布施ユキ、中村直美、今一生、沼田元氣、斉藤泉、イトー・ターリ、白汚零、大谷萩野恵美、菊池艶寿、のぎすみこ。
アーティストとして名をなしている人もいれば無名人もいる。こりにこった写真を撮る人もいれば、使い捨てカメラ一個買って待ち合わせ場所に現れた人もいたそうな。
白昼夢に誘われるような画もあれば、ド現実もあり。“揺れ幅”がとっても大きい。だから見飽きない。

 のぎさんは、撮影に際して一つの条件を出した。「撮影者も同じ条件で写真に映ってください」――ヌードを撮りたい人は、自分も裸になってファインダーに収まってくれってこと。
さらに「わたしは同性愛者です」とも伝えた。各作品の末尾に入っているポートレートと撮影者コメントに、また微妙な“揺れ”が見て取れて興味深い……なんて、まるでひとごとみたいだな。実は我がことなんだよ、なんて考えたりもして。

 ニットデザイナー、ライター、イラストレイター、露店商、便利屋、テレビCMや映画ドラマ出演など、多数の職業体験を持つのぎすみこという存在(自体がアートであるような人物)のポートフォリオ=『27人の二人』。撮影は95年、CD-ROM化は97年。そんな古さを感じさせない完成度に脱帽!
(文/Yuko Nexus6)


●Yuko Nexus6 ライター&Mac音楽家。「アスキー24」「WIRED」誌などでライターとして活躍。Macユーザーの読者が多い"リンククラブ・ニューズレター"(URL)http://info.linkclub.or.jp/にも執筆中!
著書に「FLYERS--California」(ぶなのもり刊 星雲社発売)、「サイバーキッチンミュージック」(翔泳社刊)がある。音楽家=ふにゃふにゃ脱力系サンプリング姐御 YUKO NEXUS6として「NEKO-SAN KILL!KILL!」(KAERUCAFE KACA 0085)を発売中!。
ホームページはこちら→(URL)http://www02.so-net.ne.jp/~nexus6/index.html

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Posted by dearbk at 23:33:00 | from category: 電子本紹介-CD-ROM版- | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks
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